可愛い二人のメイドさんと街に輝きを取り戻そう
スタジオ・エゴが贈るお屋敷シミュレーション！
エーベンブルグの風
Studio e.go!

操作性
荒れ果てた屋敷を元の立派な姿にし、
寂れた街を復興させることが目的の経営ＳＬＧ。

週末の休日やイベント発生時はＡＤＶパートで進行します。
ゲーム期間は２年半ですが、イベントなどによる時間経過が
何回か発生するため実質的なプレイ期間は２年強ぐらいです。


操作はキーボードだとカーソル移動が
可能な時とできない時が混在しているため、マウス操作が基本。
ＣＧモード、シーン回想、サウンドモード、
読み返しや既読スキップといった機能は実装しています。

ＡＤＶパートでの不満は特にありませんが、
スケジュール画面でのアイコンが全体的に小さく、選択しにくかったのが不便でした。


音楽
クラシック調の曲が多いです。
この中で挙げるとすれば、チェンバロ曲になっている「お仕事開始！」でしょうか。
タイトル曲でなおかつスケジュール画面の曲なのでとても印象に残っています。

ただ綺麗な曲が多いのは間違いないのですが、
他のエゴのゲームやぴょんもさんの曲に比べると全体的に地味です。
これはきっと、ゲームの特性上戦闘曲がなく、
またストーリーの性質上激しい曲もないためでしょう。


システム
ゲームの期間は２年半。
平日パートと休日パートで構成された１週間を
繰り返すことでゲームが進行していきます。

平日パートでは週の冒頭に１週間の決定します。
基本的にはメイド２人を使って屋敷の各フロアを清掃していきますが、
街に出て色々な施設に派遣することもできます。
また、街で集めた様々な問題は課題として記録され、
課題を解決することで主人公の評価がアップします。
主人公の評価が上がると街の人口が増え、収入も増加していきます。

休日パートは昼と夜にわかれており、
昼間はメイド達と話をしたり街に出てみたりと自由行動ができます。
街で様々な人から悩みごとや願いごとなどを聞いた場合は、
平日パートの課題一覧に登録されていきます。

また、ハンナの雑貨屋で屋敷を飾る調度品を購入することができます。
調度品を買ってそれぞれのフロアに配置していくことで
屋敷の品位が上がり、主人公の評価アップに繋がっていきます。
夜は街の娼館に出かけてエマと遊んだり（有料）、
メイド達と仲良くなっていれば夜伽に呼んだりできます。


ＳＬＧとしての難易度は低め。
基本的に屋敷の清掃度を上げていれば特に問題はないでしょう。
ただ、２年半というゲーム期間がやや冗長に感じたので
１年半ぐらいが丁度良かったように思います。


設定・シナリオ
１９世紀後半、イギリスにクロード＝マクドナルという名の一人の青年がいました。
彼は世界を股に掛ける大商人になる夢を見て勉学に励んでいましたが、
ある日突然現れたソフィー＝デルモットと名乗る女弁護士によって
自分がとある国の領主の息子であることと、その跡継ぎとして指名されたことを告げられます。

ヨーロッパの大国に挟まれるようにして存在する小国、『エーベンブルグ大公国』。
それが、彼の生まれた国でした。
その一地方であるロンサールは、亡くなった彼の父親で
先々代領主ベルナルド＝フラヴィーニの力で大変に栄えていましたが、
後を継いだ先代領主エリック＝フラヴィーニの施政があまりにも酷過ぎたため、
今ではすっかり寂れてしまっています。

街と同じく荒れ果てていた屋敷で彼を待っていたのは、一人の可憐なメイドでした。
クロードは、新たに加わるもう一人のメイドと共にこの屋敷に、
そしてこの町に、かつての輝きを取り戻さなければなりません。
与えられた期間は３年間。果たして、どんな未来が待っているのでしょうか…


新たにロンサールの領主を任された主人公が
街と屋敷を立て直すために奔走する足掛け３年のお話です。
全体的に休日イベントが少ないように感じたのでもっと充実して欲しかった所。


独創性
これといった点は特にありませんが、
挙げるとすれば荒れ果てた屋敷を掃除と飾り付けを繰り返し、
元の立派な姿にして寂れた街を復興させることでしょうか。



「雪のとける頃に… information-book」に『エーベンブルグの風』が
『メイドもの（仮）』として紹介されているのですが、
その中でエーベンブルグ公国の盟主である
エーベンブルグ大公の一人娘・ロザリー＝ド＝エーベンブルグが
「ブリジット・ヴェシエール」になっていて、全くの別名。
（ただし、原画には「ロザリー」とある）

また、キャラクター紹介も
「町で雑貨屋を営んでいる気持ちのいい娘さん。」で、
これは『エーベンブルグの風』のハンナと全く同じ立ち位置ですね。


「エーベンブルグの風 information book」のスタッフインタビューで
シナリオ担当の高橋直樹さんが
「で、ロザリーはと言うと、彼女は一番最後に作ったキャラクターですね。」
と語っています。

ストーリーに広がりを持たせるために、
途中でキャラクター設定を変えたのかな？




ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイトの
「運転と携帯を同時にこなす人は稀に存在」

インタビューの受け答えを行いつつ、
絵をスラスラと描ける山本和枝先生は「スーパータスカー」？

仕事の速さもこのため？

出張中に原画を描いたそうだ。





「Sensation　山本和枝 プレミアム・アートワークス」

「このゲーム（『蒼ざめた月の光』）を描いている時、
ちょうど妊娠中だったので、　イラストを描く時間を長めに取っていたんですよ。」

「はぁ……。懐かしいですね。
　昔の絵を見るのはやっぱり苦痛です(笑)。」


◎山本和枝インタビュー

――一日の作業量を教えてください。
一日平均６〜７枚描くようにしているんですが、会議や出張など
があるので、そのとおりにはならないですね。会議や移動中に作
業をしても終わらない分は、他の日の作業量を増やし調整して
います。朝、９枚クリンナップし、会社に来るまでに１２枚のコン
テを上げ、会社でコンテをクリンナップし、２１枚のマーカー塗
りを帰るまでに仕上げる……。というのがマックスですね。た
だ、これをすると次の日はぐったりです。だから合計としてはどう
よ、という感じなんですが。
――会議中も大変なんですね……。
スタジオ・エゴの取締役なので、イベントの打ち合わせや代表会
議など、頻繁に会議があるんですよ。そんなときでも、コピック
塗りやコンテなど描いています。手も口も動きっぱなしです。
（ちなみに今回のインタビューもクリンナップをされながら、答
えていただきました。）

――スランプに陥ることはありますか？
スランプというか、倒れて描けなくなることはありますね。
――それはスランプじゃなくて、過労では……。
そうですね(笑)。過労ではなく描けなくなるときはありますが、
一般的なスランプはないと思います。気分が乗らなくて一日一
枚しか描けなかったというレベルくらいしかないんです。１年
３６５日の間で１、２日くらい、それも会議やらで他のことが大変
だったからという理由が多いですね。倒れて描けなくなるって
いうのはありますね。身体がもう動かない。外にも出たくなく
て、ずっと布団の中で転がってる。仕事がひと段落するとそうな
ることが多いです。
――一般的にみると、それは休日ですよね……。
まあ、私がスランプになっていたら、スタジオ・エゴは潰れてしま
いますからね。責任感もあるかもしれませんが、絵が描きたく
ない、絵が嫌いというレベルじゃないんです。良い意味でも悪い
意味でも絵を描くことが当たり前で、生活の一部ですね。「これ
が描きたいから描いている」そういう気持ちよりは、締め切りが
あるから描いている。最近では一日○枚描いた、という達成感の
方が強いかもしれません。ただ、原画家として、雑なものは描
きたくない。いかに美しくいかに多く描けるかというのが、最近の
楽しみかもしれません(笑)。





「洋泉社ＭＯＯＫ[この美少女ゲームで萌えろ！]」

私はやはり、手書きでデッサンが
狂ってるくらいのほうが、味があってい
いと思いますね。背景とかはいいと思う
んですが、人物は手塗りの味わいを残し
たいですね。

――エゴ設立（97年）当時の反響などは
どうだったんですか。

――ぜひ聞こうと思っていたんですが、
山本さんといえば原画のスピードが速い
ことで業界でも有名ですが……。
山本　他の原画家さんのスピードは知り
ませんが、話に聞く限りでは、私は相当
速いらしいです。昨日も夜だけで顔グラ
を十何枚か描きました。ただ、ディレク
ターに言わせると、「始めるのが遅くて終
わるのが早い」と。今度の『メンアット
ワーク！3』の場合も、10月頭の時点で
まだ70枚くらい原画が残っていたんです
が、それを２０日くらいまでに全部終わら
せましたからね。その間、朝から晩まで
集中して、午前11時くらいから翌朝4時
まで。しかも他の仕事も何本も並行して
いるので、この時間はこのゲーム、この
時間は別のゲームって、きっちりわけて。
それぐらいしないと食べていけない(笑)。
――聞いているだけでスゴそうですね。
山本さんはそれに加えて、経営者であり、
広報活動まで先頭に立ってやっているわ
けですから。
山本　線画だけなら1日5、6枚。最
大級でやれば、10枚くらい。まあそこま
でやってしまうと、質に影響しますから
やらないですがね。

原画家は"描いてナンボ"ですから。

――それでエゴの作品は発売日が狂わな
いわけですが、美少女ゲーム業界に発売
日延期は付き物ですよね。
山本　ユーザーさんに失礼ですよね。発
売日が決まればしっかり出さないと。
　でも延びますねえ。なんで延びるんで
しょうか。１年に何本かは必ず出さない
と、忘れられてしまうでしょう。エゴ
作品が、雑誌に必ず何かしら出ている。
そうすれば、ユーザーさんの目に触れて、
覚えてもらえますからね。そうしていく
うちに、ユーザーさんもついてきてくれ
るようになる。




「My Fair Angel　プレリュード」
――ちなみに１日の作業量は……？
山（山本和枝）：うーん、事実上動きはじめるのは午後3時
からで、夜11時の終電近くまでやってますか
ね。作業量的には、色指定までで1日5枚ぐら
いかな。でも、メイブの第3段階の立ちキャラ
なんですけど、29種類あるラフを朝の10時から
夕方の6時ごろまでがんばったら終わった。だか
ら、集中したらまだスピードアップができるんじゃ
ないかなって。たしか“蒼ざめ”やってる時も2
週間で80枚くらい原画描けたし。
――それでも、かなりのスピードで描いてる
と思うんですけど……。
山：きっとこれでユキナ（※５）がいなかったら
もっと早いんですわ。

ユキナが……（※５）
　ユキナちゃんは、去年誕生した山本さんの
愛娘。

◎山本和枝　やまもとかずえ
驚異
的なペースで原画をアップ
しつつも、クオリティーは
落とさない。

山：メイヴの
第３段階、１日で29枚くらいあげました
（笑）。でも、色を塗るのには２日かかりま
したねぇ。

山：私って、短期集中型なんですよ。初めは
のんべんだらりとしてるんですけども、も
うラストアップまで15日しかないワケです
よ。この時点で、まだ立ち絵が49枚原画が残
ってるという……49枚プラス、イベンとも20
枚くらい残ってますし、もう、逃避したくな
りますね（笑）。





「エターナル・キングダム〜滅びの魔女と伝説の剣〜　設定原画集」
韓国出張中に書いた原画で、早朝から必死こいて書いた思い出があり
ます。





「ＳＥＸＹゲーム大全」
月産１００枚以上を仕上げる驚異の原画製造テク！！
急ぎの時は月産１６０枚をこなしたこともあるという。




「ＩＺＵＭＯ information-book」
《Studio e･go!なにわインタビュー》
P34
――『IZUMO』では企画の方から参
加なさってるんですか？
山本　企画のほうは、ほとんど「あ」
の人なんですけど、最初にＲＰＧもの
っていうのだけ決めて、あとは予算
内でやってくれ、と(笑)。

P35
◎写真でわかる 山本先生の原画ができるまで
インタビューに警戒に答えつつ、作業
を進める山本戦士。ラフな線が、みる
みるうちに原画として完成していく。

P36
圧倒的な作業の速
さには目を見張るものがあった。



「エーベンブルグの風 information book」

キャラクターデザイナーとしての山本和枝氏は、
どんなことを意識しながら「エーベンブルグの風」の
キャラクターたちを生み出したのか？
付録ＣＤ-ＲＯＭに収録したムービーの撮影の合間に、
氏のキャラクターデザインに関するこだわりをうかがった。


超速原画家山本和枝

　早い早いと言われている山本和枝氏
の作業スピード。それはゲームのリリ
ースのペースから見ても明らかだが、
では実際にはどれくらいのものなのか。
「１カット１時間くらいで原画から色指
定まで仕上げてしまいますね」
　と、語りつつ、山本氏は取材班の目
の前で、本誌付録のポスターの原画を
着々と仕上げていく。これは凄い！
「乗り物だとか宿泊先だとか、座れる時
間があれば、基本的に仕事しちゃうん
です。ライトテーブルとかマーカーも
いつも持ち歩いているんで（笑）」


山本和枝先生の色指定原画ができるまでをダイジェストムービーでお見せします。


このムービーを見ても、
山本和枝先生は手を動かして絵を描きながら、
会話をしている








電撃姫プレミアム１　Pythian〜ピュティア〜 山本和枝アートワークス
■発行…………１９９９年９月１５日　初版発行
■発行所…………株式会社メディアワークス
■発売元…………株式会社角川書店
■編集…………小野田雅、諏訪浩樹
■編集協力……飯塚幸正、吉田健太郎
■ライター……鴫原千太郎、岡田幸生、三井一穂

「いま、ＣＧスタッフは７人
いるので、１日８枚以上原
画を仕上げていかないと作
業が追いつかれてしまうん
ですよ。その辺はちょっと
つらいです（笑）」


全般
全体的な出来はそこそこといった所で、
特別優れているわけではありませんが、取り立ててダメな点もありません。

まあ、Studio e.go!らしい普通の作品という事です。


得点７点





参考資料

	

		
葛西利忠　編集所／ピーズサイテック『雪のとける頃に… information-book』笠原出版社　平成14年
	
	

		
制作・編集／ピーズサイテック（森林美奈子）
『Sensation　山本和枝 プレミアム・アートワークス』ジャイブ　2007年
	
	

		
編集／星野新一、ブレインナビ『洋泉社MOOK[この美少女ゲームで萌えろ！]』洋泉社　2003年
	
	

		
編集人／青柳昌行『My Fair Angel　プレリュード』エンターブレイン　平成13年
	
	

		
『エターナル・キングダム〜滅びの魔女と伝説の剣〜　設定原画集』
（『エターナル・キングダム』初回限定版同梱）
	
	

		
編集人／平子保雄『SEXYゲーム大全』KKベストセラーズ　1999年
	
	

		
天野哲也『IZUMO information-book』笠原出版社　平成14年
	
	

		
深谷雅弘、森優子、株式会社ブラフマン『エーベンブルグの風 information book』笠原出版社　平成14年
	

	

		
鴫原千太郎、岡田幸生、三井一穂『Pythian〜ピュティア〜 山本和枝アートワークス』
発行所／メディアワークス、発売元／角川書店　1999年
	

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