無限ループアドベンチャーゲエム！
淫らで狂おしい不思議の旅へ！！
ふしぎ電車

デジアニメ・コーポレイション

操作性
ふしぎな路面電車が走る、ふしぎな町を舞台にした、
ループ型シナリオのノベルタイプのアドベンチャーゲーム『ふしぎ電車』(以下『ふしぎ』)です。

基本的には主人公が乗り込んでしまった路面電車の各停留所で「車内に留まる／下車する」を繰り返していく、
連作短編形式のストーリー進行になっています。

操作はマウス・キーボード両対応。
ゲーム中のデータセーブは任意のタイミングで行う事ができますが、
デーダロード時には内部で管理されているセーブ地点からの再開になります。

サウンドモードはタイトル画面の「おまけ」のＣＧモード＆回想モードに音楽プレーヤーとして組み込まれている形で、
サウンドモードでＢＧＭ変更した状態のままＣＧ閲覧が可能。
なお曲選択は曲名一覧から選択するリスト形式ではなく、トラックを順々に切り換えていく順繰り形式になっています。


音楽
この中ではチンドン屋風の曲調のタイトル画面のＢＧＭ「竹と雀」、陽気なアラビア風の「はっぴ〜で行こう☆」でしょうか。

中でも「竹と雀」は、タイトル画面の背景グラフィックはパッケージイラストと共通、
つまり淡い色調の街並みをバックに「少女車掌」(劇中のメッセージウィンドウの名前欄の表記より)がシャボン玉を飛ばしている構図なだけに、
チンドン屋風の曲調とミスマッチでインパクトがありました。

ただチンドン屋風やアラビア風以外にも、ジャズ風の曲やフラメンコ風の曲があったりするものの、
どちらかと言うと曲調が多彩というより全体としてのまとまりを欠いている印象を受けました。

また全体としてサウンドがドギツく、ゲーム中に何度も繰り返して聞くのは厳しい曲調なのもマイナス。


とはいえＢＧＭ全体のまとまりを欠く、曲調のドギツさというのは、
本作『ふしぎ』のサイケデリックかつ不条理で怪しげな世界観によくマッチしてはいるのですが……


システム
基本的なゲームシステムは、画面下部のメッセージウィンドウもしくは全画面形式で表示される文章を読み進め、
時折現れる選択肢を選んでいく極々一般的なノベルタイプのＡＤＶですが、
路面電車の終点の停留所で夜を明かすとゲーム冒頭の導入から再スタートするループ型のゲーム構成になっています。


ループ型のシナリオという事もあり、周回を繰り返す事で同じエピソードでもシナリオ変化や新たな選択肢の出現、
あるいは以前は選ばなかった選択肢を選ぶというのは非常に面白いものの、
既出のエピソードを何度も繰り返すループ型シナリオの特性上の欠点に加えて、
「車内に留まる／下車する」の選択を停車駅ごとに繰り返すため、停車駅を一巡した１周目の段階で既に単調さを感じてしまいました。

また、車内に留まると乗客とのＨになる、
下車すると町の住人の「電車の時間」という趣旨の一言を言われた主人公が電車の事を唐突に思い出し
（と同時に町での出来事を思い出せなくなる）慌てて電車へ戻る、
下車の有無に関わらず駅間の電車内で少女車掌との会話が発生するというのも毎回のパターンになっていて、
これらの事も単調さを感じる要因なっています。


設定・シナリオ
駅前の酒場で酔い潰れて目を覚ました主人公。
そこはふしぎな路面電車が走る、ふしぎな町だった。
不条理に満ち、常識では考えられない町。
路面電車に乗り込んだ主人公は、そこで様々な物語とあらゆるＨな出来事を体験していく。

ふしぎな体験をしながら終着駅に着いた主人公。
しかし、そこに着いた時はもう夜が遅く、駅前の酒場で夜明けを待つ。
またもや酔い潰れ、目が覚めるとそこは路面電車の走るふしぎな町……
そして、それまでの記憶を無くした主人公は再びふしぎな路面電車に乗り、ふしぎな町を巡ることになる。

この無限にループする路面電車の旅は一体いつまで続くのか？
主人公は、いつになったら家に帰れるのだろうか？


途中下車した主人公（メッセージウィンドウの名前欄の表記は「私」）が訪れる町は、
基本的に1960年代をモチーフしているようで、例えば商店街に貼ってある広告が昭和テイスト全開。

また「モズラ」と「赤いカシカチ」と大きく赤字で書かれたポスターも飾られています。
ポスターの構図も前者は映画「モスラ」(1961年)、後者は映画「赤いハンカチ」(1964年)を彷彿とさせる点から言っても、
1960年代な町という見立てで間違いないでしょう。
（映画のポスターは「ゴジラ大全集　東宝特撮映画ポスターコレクション」と「なつかしの日本映画ポスターコレクション PART2」を参考）

一方、主人公そのものは“現代人”扱いのようです。
路上で目覚めた主人公が「携帯電話」を背広の内ポケットから取り出そうとしたり、
路面電車の終点の停留所を出た主人公が鉄道駅の駅舎を見て「……駅だ。しかも、ＪＲと書いてある」と呟いているあたり。
（もっとも、“現代人”と言っても、“2003年当時”という但し書きが必要でしょうけれど）


「サイケデリックかつ不条理で怪しげな世界観」
基本となる舞台設定は1960年代と述べたものの、
あらすじに「ふしぎな路面電車」「ふしぎな町」「不条理に満ち、常識では考えられない町」とあるように、
総じてサイケデリックかつ不条理で怪しげな世界観です。

例えば停留所の停車時間がそれぞれ「２分」だったり「１時間」だったり、はたまた「想い出時間」というのもあったり。
（主人公も「想い出時間ってなんだ？」と不思議がる）

下車先の町で「右に行くか、左に行くか決めたまえ」と決断を迫られ、「決めないと改造人間にするぞ」と脅される。
「革命軍」が「町長率いる町民軍による、残虐な軍事独裁政治」から「町を解放するべく、ゲリラ戦を展開している」町があったり。

背景グラフィックも変なものが多く、路面電車の車内が魚眼レンズのように歪んだカットとか、
下車先の町で近景は普通の住宅街なのに遠景に太陽の塔やスペースシャトルがあったり。あるいは「町全体が、紫色の煙に、覆われている」とか。

禅問答のような会話もありまして、例えば主人公と少女車掌の会話（主人公自身、この会話を「妙な禅問答」と評している）。
少女車掌に「オマエの夢とは、いったい何なのだ？」、「仮に夢が全て叶った時、人間はどうする？」と尋ねられ、
少女車掌が「私の夫の話」を話し始めようとして「結婚してるんですか？」と驚く主人公に「してるかもしれないし、してないかもしれない」と答え、
会話の最後に主人公が「本当に結婚してるんですか？」と尋ねると「もちろんだ。遠い未来で、結婚している」という返答。

また町で「公衆電話」の場所を尋ねたら、こんな回答。



    

        
【木下】
それは、右に向かえば、
あったかもしれないし、なかったかもしれない。
【木下】
しかし、もしかしたら、左に向かえば、
なかったかもしれないし、あったかもしれない。
【木下】
つまり、右か左、どっちかにある。
どっちにもある。どっちにもない。ということだな。

    


その一方で、哲学めいた会話も。例えば“名前”の話や“時間”の話。



    

        

    

        
【コナツ】
つまり、名前は、
そういう人を識別する記号でしかないのよ。

    

        

    

        
【私】
ま、まあ、名前なんて、
どうでもいいじゃないですか…
【私】
…所詮、人間を識別する為の記号だし、
……大した、意味なんてないですよ。

    

        

    

        
【私】
つまり、名前とは、対物的、対人的に、
その存在を意味する、便宜的な呼称ということだな。

    

    


    

        

    

        
【私】
まるで、時間が止まったような店なのに、
ちゃんと、時間ってのは経つんだね。

〔中略〕
【酒場の主人】
そりゃあ、そうですよ。
フフッ、時間が経たなきゃ困るじゃないですか？
【私】
どうして？
時間なんか経たない方が良くないですか？
【私】
僕なんか、ずっと、子供の時の…
夢のような時代のままで…
【私】
時間が止まってくれてたらなあ…
って、時々、思ったりするんですけどねえ。
【酒場の主人】
終わるから、夢なんですよ。
【酒場の主人】
ずっと、そこに居たら、
夢なんだかどうか、わからなくなりますって。
【酒場の主人】
子供の頃は、早く大人になりたい。
大人になったら、子供の頃に帰りたい。
【酒場の主人】
人間は、勝手なもんですよ。

    

        

    

        
【私】
今、何時なんですか？
【少女車掌】
時間？　それはオマエが決めればいい。
【私】
オマエが決めれば…って、そんな。
【少女車掌】
時間なんて、元々、人が勝手に決めたものだ。
オマエが決めるのに、不都合はない。
【私】
そうですね…
【私】
私は、誰かが、
勝手に決めた時間の中で、生きてるんですよね。

    

    


また劇中で「科学は、後から理屈をつけただけ」と語るキャラクターがいますが、
これには「禅とオートバイ修理技術――価値の探求」や「ブルーバックス B-1724　ウソを見破る統計学 退屈させない統計入門」を思い出しました。



    

        
【ナミダ】
私は、科学を信じてませんよォ。
科学は、後から理屈をつけただけですもん。

    



    

        
　ここで直面するのは、大いなる未知、西洋思想の空隙である。解決の糸口になるアイデア、すなわち仮説が必要になる。残念なことに、従来の科学的方法ではとりつく島もない。
従来の方法で識別できるのは、視力で言えばせいぜい一・〇、つまり正常範囲内に限られる。
一般的によく知られているものを鑑識するにおいては十分であるが、過去に一定の連続性がなければ、進むべき道を識別することはできない。
創造、独創、創意工夫、直感、想像――いわゆる行き詰まらないこと――これらはまったく科学の範疇の埒外にある。

    
    

        
「禅とオートバイ修理技術――価値の探求」より
    


    

        
　これが、高額所得者の所得分布がべき分布になるひとつの説明です。
　しかし、突き詰めて考えると、高額所得者の所得分布がべき分布になるメカニズムは完全には解明されているとはいえないことが分かります。
もちろん、庶民と高額所得者の間に切れ目がある理由もはっきりしません。
　しかし、安心してください。それはごく自然なことです。
　話は逆で、分布を見てみたら対数正規分布になっていた、だから背後に掛け算の世界がある、というように考えられているわけです。
あくまでも説明は後づけで、実際にどのようなメカニズムであのような分布が現れるのかは分かっていないのです。
　社会現象に限らず、ミクロなメカニズム（ここでは個人の所得の決まり方）には、あまりよくわからないことがたくさんあります。
たとえば、温度を下げて摂氏０度以下になると水が氷になることは子どもでも知っています。
しかし、これをミクロな視点（水分子同士がどのように関係しているか）から説明するのは至難の業で、現在でも十分には分かっていません。
　科学はこうした「分からないこと」と「仮説」の集積なのです。

    
    

        
「ブルーバックス B-1724　ウソを見破る統計学 退屈させない統計入門」より
    


「ストーリーの先を予測しにくく、更に物語の進行の度合いがわかりにくい」
『ふしぎ』のサイケデリックかつ不条理で怪しげな世界観は、それ自体は面白いものの、作劇論の観点から言えばかなりマズい代物になってしまっています。
具体的に言えば、『ふしぎ』はとにかくストーリーの先を非常に予測しにくく、更に物語の進行の度合いが非常にわかりにくいのです。

「映画術　ヒッチコック／トリュフォー」や「新版 シナリオの基礎技術」によりますと、観客は常に次のシーンやセリフを予測しながら映画やテレビを見ています。




	

		
Ｈ　〔中略〕　観客というものは、映画を見ながら、いつも映画そのものより一歩先んじて、「そうか、もうこれからどうなるかわかったぞ！」と思いたがるものだ。
この観客心理をわきまえたうえで観客をうまく完璧に誘導してやらなければならない。
Ｈ　それはそういうものだと思うな。お客は映画館に入って席につく。そして、「さあ、見せてくれ」と言うわけだ。
そして、いつも、なんとかして映画よりも一歩先んじて見ようとするものだ。
〔後略〕
    
	

		
「映画術　ヒッチコック／トリュフォー」より
※文中の「Ｈ」は、映画監督のアルフレッド・ヒッチコック。
    


	

		
　打者ならぬ観客は、前にも述べた記憶の蓄積と、さらに自分の今までに見てきたたくさんの映画やテレビや、
そして演劇などの、いつの間にかたまっている知識を働かせながら、次に出てくるシーンを予想しています。
いやシーンばかりでなく、セリフさえも予測しながら見ているものです。そこで、もし観客の思う通りのセリフやシーンになったときは、一つの満足感を得ると共に、その映画を軽くみます。
　この観客との心理合戦はなかなかむずかしいもので、あるときは観客の予想通りに行って満足感を味わせることが必要であり、またあるときは観客の意表をつく必要があります。
わかりきったセリフやシーンのつなぎは、満足感を与えると共に退屈感を与えてしまうのです。

    
	

		
「新版 シナリオの基礎技術」より

    



『ふしぎ』のストーリーは、路面電車内やそれぞれの町で世界観があまりにもバラバラ（それどころか主人公の名前すらも町ごとに異なる）、
数々の怪しげなセリフ、それでいて哲学めいた言動や禅問答のような会話などのため、とにかくストーリーの先を予測できず、
「観客の思う通りのセリフやシーンになったときは、一つの満足感を得る」事が全然できないのです。

例えば、下車先の町で「右に行くか、左に行くか決めたまえ」と決断を迫られ、「決めないと改造人間にするぞ」と脅される――と先に書きましたが、この続きを書くと――
「右へ進む／左へ進む」が表示されて右へ進むと（１周目では「右へ進む」を選んでも左へ行く事になる）、道端の電柱に鎖で繋がれた状態で「蟻さんと、お話ししてる」女の子・チヒロが登場。

チヒロが鎖で繋がれているのは「お母様のＵＦＯに、勝手に乗ってしまって、罰を受けている」ためで、
その母親にチヒロを鎖から解くよう頼みに行ったら、「ところで、あなたは、地球環境問題について、どうお考え？」と尋ねられ、
選択肢「文明を捨てるべきだ／機械化を推進するべきだ」が表示される――という具合。

２周目以降では「右へ進む／左へ進む」の選択肢で「右へ進む」を選べるようになりますが、
主人公は右へ進もうとするものの今日が実は「公衆ち○こ」の当番の日で、その場から一歩も動くなくなってしまう――という展開です。


あともう１つ、『ふしぎ』は「物語の進行の度合いがわかりにくい」点もネック。
「ゲームシナリオライターの仕事 名作ＲＰＧから学ぶシナリオ創作術」ではありませんが、「いつ終わるかわからないことを続けるつらさ」がありました。




	

		
■進行状況をプレイヤーに知らせる
　ひとつめの理由は、プレイヤーに物語の進行の度合いを知らせるためです。暗黒ランが残り何本かを知らせることで、どの程度物語が進行しているのかおおざっぱに教えてくれているのです。
これにより達成感もわきますし、なにより、いくつあるかわからないものを集めたり、いつ終わるかわからないことを続けるつらさが軽減されます。

    
	

		
「ゲームシナリオライターの仕事 名作RPGから学ぶシナリオ創作術」より

    



この「いつ終わるかわからないことを続けるつらさ」は、
「車内に留まる／下車する」の選択を停車駅ごとに繰り返す単調な展開、サイケデリックかつ不条理で怪しげな世界観のため先を読みにくいストーリー以外にも、
終着駅で夜を明かすとゲーム冒頭の導入から再スタートするループ型のゲーム構成があります。

『ふしぎ』は全てのフラグを立てると、主人公は路面電車の終点の停留所から鉄道駅で電車に乗る事ができ、そのまま帰宅してエンディングを迎え、スタッフロールが流れます。
一方、全てのフラグが立っていない場合は、電車に乗れないので駅前の酒場で夜明けを待っていたら酔い潰れ、目が覚めると路面電車に乗る前にいた町に戻っている――という展開になります。
そして路面電車に乗って各停留所や町を同じように巡る事になります。
全てのフラグが立つまでは、一切の変化がないこの一連の流れをひたすら繰り返すので、周回を何度も繰り返しても一向に終わりが見えないのです。

一応フラグを立てていくと、タイトル画面で少女車掌が飛ばしているシャボン玉に女性キャラクターの姿が映るようになりますが、これはタイトル画面でしか確認できません。
また立てたフラグが増えてくればシャボン玉に映るキャラクター数も多くなるのでタイトル画面の変化に気付きやすいものの、
フラグが少ないうちはシャボン玉に映るキャラクター数も少ないのでタイトル画面の変化に気付きにくいシロモノになってしまっています。


ストーリーの先の予測しにくいさついては、『ふしぎ』のサイケデリックかつ不条理で怪しげな世界観とセットなのでまだしも、
物語の進行の度合いのわかりにくさは「ゲームシナリオライターの仕事」で挙げる数の提示のように、
何かしらの形で物語の進行進行の度合いがプレイヤーにわかるような仕掛けを用意するべきだったしょう。




    

        
物語のなかで数を提示することの重要性

　物語の冒頭で、これから主人公がやるべきことの「数」が提示されることがあります。例えば「７・つの玉を集めろ」や「四・天王を倒せ」といったたぐいのものです。

〔中略〕
　このやるべきことの数を提示するのにも、ちゃんとした意味、制作者の意図があります。
特にRPGは、「主人公＝プレイヤー」を意味するので、主人公にやるべきことの数を知らせているということは、プレイヤーに・・・・・やるべきことの数を教えているわけです。

    

        
「ゲームシナリオライターの仕事　名作RPGから学ぶシナリオ創作術」より
    


独創性
全体に漂うサイケデリックかつ不条理で怪しげな世界観でしょうか。また哲学めいた会話というのも本作『ふしぎ』の特徴でしょう。

あと「ふしぎ電車」というタイトル名、「少女車掌」という名前の車掌の存在、
列車に乗って停車駅に下車したり、下車しない場合には乗客が入れ替わりで次々に乗車してくるストーリー展開は、「銀河鉄道の夜」や「銀河鉄道999」がモチーフ？
もっとも、『ふしぎ』は「銀河鉄道の夜」や「銀河鉄道999」とは世界観が違い過ぎて、全然似ていませんけどね。


「革命軍の女ゲリラ・チエ」
停車する町の１つ「人見谷」は、町民軍に対して革命軍がゲリラ戦を展開していて、その革命軍に「チエ」という名前の女ゲリラがいます。
チエは「名前は、偉大な革命家、チエ・ゲバラから貰った」と語っていて、これはチェ・ゲバラが元ネタでしょう。

そして戦死したチエの恋人の名前が「カストロ」（笑
（こちらはフィデル・カストロで、先のチェ・ゲバラと併せてキューバ革命ですね）



    

        

    

        
【チエ】
そんな俺を、
いつも励ましてくれたのが、カストロだった。

そう言った時、
チエの頬に、一筋の涙がこぼれた…

【私】
カストロ…？
…それが、君の大好きだった男なのか？
【チエ】
ああ、そうだ…
しかし、先日の戦いで、カストロは死んだ…

    

    


「先日の戦いで、カストロは死んだ」と聞くと、なんか“うちのフィデルはキューバへ辿り着く前に水死しちまったよ”みたいなのをイメージした筆者です。


「ロボトミー手術」

    

        

    

        
【看護婦女医】
何だか、落ち着きがないようですがぁあん。
ロボトミー手術でもしますかぁん？？

    

    


主人公に「ロボトミー手術」を持ちかける「看護婦女医」。
わざわざロボトミー手術を持ち出してくるのは、『ふしぎ』らしいと言えば『ふしぎ』らしいのですが。




	

		
　ロボトミー手術。
　ロボットみたいにするから「ロボトミー」ではありません。
ロボトミーの「ロボ lobo」というのは、前頭葉とか側頭葉とかの「葉」という意味であり、「トミー tomy」とは、切断や切除といった意味です。
　ひとことでいうと、脳の前頭葉を切る手術のことなんです。
　現代に生きるわれわれからすると、ロボトミー手術というのはすごく悪名高い。

    
	

		
「光文社新書241　99・9％は仮説 思いこみで判断しないための考え方」より

    



「スペースシャトル」
停車する町の１つ「神屋崎」は、近景が普通の住宅街で遠景に太陽の塔やスペースシャトルがあります。
この風景を見た主人公は「目の前の町並みは、とても、懐かしい感じがする、古い日本の田舎町といった感じなのだが…」、
「その後方、遠くの方には、近代的、いや、未来的な建物がそびえ立っているのだ」という傍白があります。

スペースシャトルの存在は、『ふしぎ』が発売した2003年当時でも既に目新しいとは言えず、2018年現在からするとスペースシャトルは最後の打ち上げが2011年で、むしろ前時代と言えます。
とはいえ『ふしぎ』に出てくる町並みは1960年代をモチーフにしている事を考えると、その意味では太陽の塔やスペースシャトルの存在は確かに「近代的」「未来的」と言えます。
（1960年代であれば、スペースシャトルよりもソユーズやアポロの方がふさわしいでしょう）

――そう言えば、スペースシャトルは2011年に打ち上げ終了したのに、ソユーズは2018年現在でもいまだ現役というのは改めて驚かされますが、
完全に使い捨てのソユーズは再利用前提のスペースシャトルよりも信頼性やコスト面で優れているほかに、
ソユーズには基本設計を引き継いだまま新しい技術や素材を機体に取り込む事が容易にできるといった長所もあるようです。

これってつまり、５０年前の自動車や電車よりも現在の自動車や電車の方が高性能・高品質と同じ理屈？
あるいは麦酒様清涼飲料水「ホッピー」なんかも、1948年の発売当初と現在では全く似て非なるシロモノなのでしょう。


全般
点数は５か６かで悩みましたが、６点にしました。

総じてゲーム進行が単調になりやすく、ストーリーの先を予測しにくく、物語の進行の度合いがわかりづらく、正直言ってゲームを続けるのはかなりしんどいものがありました。
それでもサイケデリックかつ不条理で怪しげな世界観というのは、それはそれで面白くありましたし、それに『ふしぎ』最大の特徴でもあるので６点にしました。


得点６点


参考資料
山田誠二『ゴジラ大全集　東宝特撮映画ポスターコレクション』データハウス　1995年
ポスター･監修/日高靖一『永久保存版 なつかしの日本映画ポスターコレクションPART2 スターでたどる黄金期日本映画史　ビデオデータつき』近代映画社　1990年
ロバート・M・パーシグ　訳/五十嵐美克、兒玉光弘『禅とオートバイ修理技術――価値の探求』めるくまーる　1990年
神永正博『ブルーバックス B-1724　ウソを見破る統計学 退屈させない統計入門』講談社　2011年
アルフレッド・ヒッチコック、フランソワ・トリュフォー　訳/山田宏一、蓮實重彦『ヒッチコック／トリュフォー　映画術』晶文社　1981年
新井一『新版 シナリオの基礎技術』ダヴィッド社　1985年
前田圭士『ゲームシナリオライターの仕事 名作RPGから学ぶシナリオ創作術』ソフトバンククリエイティブ　2006年
竹内薫『光文社新書241　99・9％は仮説 思いこみで判断しないための考え方』光文社　2006年

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