屋敷内に渦巻く陰謀…。見えざる悪意…。
失われた過去を知る少女…。
エリュシオン
〜永遠のサンクチュアリ〜
Terios

操作性
アドベンチャーゲーム。
ＲＰＧ的なマップの上を行きたい所まで
直接キャラクタを移動させてイベントをおこすタイプ。

マウスでもプレイが出来ますが、マウスではクリアが厳しいシナリオもあるので、
キーボードの方向キーでの操作に慣れておいたほうが無難だと思います。

コンフィグ関連はスクリーンサイズ、移動時の移動カーソルの表示の有無、
日付・場所の表示、音声、音楽、効果音としっかりと必要最低限だけは抑えた仕様。
そういえば、文章の読み返し機能が無いのは残念ですね
特に多くの情報に基づいたシナリオがウリなだけにそこは惜しい所。

ちなみにディスクレスでのプレイは不可。


音楽
全体としての安定している感じ。
寂しげな曲が多くハードなシナリオも多めの
このゲームの雰囲気にあっていると思います。

ある意味のテーマともいえる「messe Gloria」が印象的です。
あと「流れる雲を追いかけて」が印象に残っています。

それ以外だとアレンジが多く使われる機会が多めの
「乙女の森の伝説」他でしょうか。


システム
ゲームは午前と午後（日によっては夜）に分かれていて
それぞれ与えられた時間内で屋敷と島内を移動し、
そこに点在するキャラクター達と出会って
会話をしながら物語を進めていきます。

会話は通常、マップ上に配置されたミニキャラクター達と行われますが
状況などによっては画面が切り替わりアドベンチャー形式で
会話を行っていく場合もあります。

アドベンチャー形式での会話は
主に選択式（二択または三択）で進められていきます。
物語的に適切であると思われる選択肢を選ぶことにより
物語のＥＤやイベントに影響を与えます。


設定・シナリオ
アドリア海に浮かぶ地図にはない島、イタリア領サンタ・マリア。
この島に建つ壮麗な洋館では、マフィアのボスであるテオ・パドリーノ老が、
非合法な手段により集められた美しいメイドたちに囲まれ、日々を過ごしていた。

パドリーノの主治医として日本から招かれた主人公、内科医・葛城遼一は、
メイドたちへの命令権を与えられると同時に、館の住人の健康管理を一任される。
無職のまま自堕落な生活を送っていた自身を突然名指しで指名してきた、

パドリーノの意図を警戒しつつも悠々とした日々を送る葛城。
だが葛城の周囲で不思議な現象が巻起こりはじめ、事件へと至る。
はたしてこの島にはどのような秘密が隠されているのだろうか…


これが導入で、サンタ・マリア島に隠されていた謎と葛城の過去が、
ヒロインたちのシナリオをクリアしていくと徐々に見えてくるというもの。
ストーリー全編で宗教・世界情勢・医学・民族問題・オカルトなどの知識が
大量に詰め込まれていて、なかなか本格的ななものです。

このテのゲームなどには、お約束ともいえる「用語説明」もアリ。
こういう知識が要求されたり、直接的に知識を増やすことが出来たり、
調べていくとこういうパロだったのか！
と、さらにニヤリとできるタイプは好きです。

気になった点といえば、三つの隠しシナリオの完成度の高さがあげられます。
それだけに、謎の核心に近づけば近づくほど面白いという素晴らしい状況だったのですが、
裏返すと、最初の方のヒロインたちがオマケみたいになっているという事でもあるわけで。
どう考えても、後から出てきたシナリオの方が総じて優れているんですよね（苦笑）

テオ・パドリーノやサンタマリア島の謎に関しては、充分な出来栄えなんですが
キャラごとのシナリオに関しては、それぞれ消化不良な所も散見しますから。
初期ヒロインたちのシナリオではその傾向が顕著というわけです。


個人的にとても興味深かったのは、知識をこれでもかと詰め込んだ作りになっているので、
ある面では、ライターさんの知識の限界といったものも垣間見えている所でしょうかね。
まぁ、ライターさんの限界なのか
それとも物語的な映えを優先しただけのかわからない所はありますけど。

しかし、いずれにしても無知蒙昧な輩どもに本物を教えてやる…と
言わんばかりのメイドへの拘りなどを筆頭に、
これだけリアリティを追い求めたにも関わらず出来上がったものの中に、
露骨にフィクションでしかありえないファンタジックな展開が
混ざり込んでいるというのはある意味喜劇であり悲劇であるのかもしれません。


独創性
システム的には特になし。

反面、記号としてのメイドではない歴史的背景を踏まえたメイドの描写に
異常なまでに執念を燃やしている様はとっても独特。


全般
ストーリー的にも非常に丁寧に作られていて、非常に完成度の高いものになっています。
薀蓄を語られたり詰め込まれた知識量が多い類が好きなら損はしないでしょうね、
絵柄が気に食わないとかではない限りは（笑）

個人的には、現在進行形の事象を物語に組み込む面白さと、
その難しさを同時に強く感じることの出来たゲームとして印象深いです。


得点８点

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