中国風異世界召喚ファンタジー
御伽ノベルアドベンチャー
朱華

LiLiM

操作性
中華風な世界観のノベルタイプのアドベンチャーゲーム。
基本的には画面下部のメッセージウィンドウに文章が表示されますが、イベント絵が表示されている時は文章表示が全画面形式に変化します。

操作はキーボードだとカーソル移動ができないのでマウスが基本。
読み返し機能や既読スキップといった機能のほか、ＣＧ閲覧、回想閲覧、ミュージックモードといったものは全て装備しており、操作性における不満点は特にありません。


音楽
中華風な世界観ということなので、音楽も中国風なものが多いです。
この中では厳かで雄大な曲調のタイトル曲「天命 amanoinochi」のほか、「畏縮 ishuku」「慰籍 isha」「葬斂 souren」が好きですね。


システム
画面下部のメッセージウィンドウもしくは全画面形式で表示される文章を読み進め、
時折現れる選択肢を選んでいく極々一般的なノベル型ＡＤＶですので、これ以上書くようなことは特にありません。


設定・シナリオ
もう何度、この夢を見たのだろう…。
少女にどこかに連れて行かれる夢を…。

目を覚ました鹿島智明は、いきなり「異人」と呼ばれ王城へと連行される。
ここは「清王朝の中国？」――でも何か違う。
どうやら自分は､この国の神官の聖霊の力とやらで、
異世界に召喚されたらしい…。
そして、智明は朱南国を治める皇帝（おうだい）と呼ばれる更紗（サラサ）から、
「元の世界へは、もう戻れない」
と告げられ、やがて皇族をめぐる陰謀に巻き込まれていく。


主人公が異世界にワープするという一種のナルニア系の話ですが、
ストーリーが事実上皇宮の中だけで完結しているというのはいくらなんでも舞台が狭過ぎると感じました。
舞台が狭すぎて異世界ならではの人間関係の特殊性などが感じられず、
異世界ファンタジーである必要性がないのでは？　という印象が強く残ったためです。

ＡＤＶは限られた舞台と狭い人間関係の中で微に入り細を穿つ描写を得意としているとはいえ、
せめて街全体を舞台するような話にして欲しかったと思います。

ただこの点については、ＯＨＰなどで「朱南国」について解説が載っている点や
主人公が「元の世界に戻れない」とわざわざ宣告される反面、「元の世界に大切な人が残っている」というオープニングなどから、
皇宮の謀略にケリがついたら元の世界へ帰る方法を求めて
主人公が国中を旅する展開があると勝手に思い込んでいた部分もありますけどね。


それと、主人公が「元の世界へは、もう戻れない」と宣告された時に反発するのはともかく、
主人公の態度が最後までムダにデカイままで、
「遠慮」いうものを元の世界に置いて来てしまったかのような言動が目立ったのは残念です。
もうちょっと、異邦人は異邦人なりの身の振り方というものがあると思うのですが。

また、いつの間にか突然生き別れになってしまった恋人の事などが完璧にフェードアウトして
何事もなかったように忘れていたりするのはいかがなものかと思います。


独創性
これといった点は特にありませんが、
敢えて挙げるとすれば世界観でしょうか。
中華風の世界観というのは非常に珍しいと思います。
 

全般
中華風という点には心惹かれるものがあったのですが、
序盤の伏線を完全に忘れてしまっているストーリーや
話の舞台が『イリス』よりも小さく、
『イリス』以上に異世界であることを感じることができない。

更には「移民」としてのＴＰＯをわきまえているとは思えない主人公の失礼な態度など、
残念な部分がとても多い作品でした。

タイトル曲を聞いている限りでは
とても壮大そうなお話のように感じるんですけどねえ……。


「延期、延期、延期」
本作も発売までに時間のかかったゲームです。

自分が調べた限り、
最初は２００３年８月８日（もしくは夏）だったのが
２００３年秋に延び１２月予に延び、
実際に発売したのは２００４年２月１３日。

２００３年前半の段階で雑誌などに、イベント絵が既に紹介されていた所を見ると、
シナリオで問題が発生したのは間違いないでしょう。

序盤と終盤で齟齬あったのは、これが原因のような気がします。
もっともＡＤＶというゲームシステムの向き不向きを考えずに
壮大なシナリオを志してみじめに自爆するというのは、エロゲー製作でありがちな失敗例なので
『朱華』も同じ様な失敗を犯したのではないでしょうか。


得点５点

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