『ぱられる』型ドタバタ・バトルdeあどべんちゃあ〜！
地っ球の平和をま〜もるためっ！！
Vol.1〜Vol.4

C's ware

操作性
地球に攻めてきた宇宙人との戦いに巻き込まれてしまった主人公が繰り広げる、ドタバタコメディのコマンド選択式アドベンチャーゲーム。
ストーリーは全１６話構成になっており、Vol.1からVol.4までの各巻に４話ずつ収録されています。

なお上記のアオリ文に「『ぱられる』型」という文章がありますが、ここで言う「ぱられる」とは、
C's wareが2000年に発売したWindows用18禁ゲームソフト『パラレルハーモニー』を指しています。

操作はキーボードだとカーソル移動ができないのでマウスが基本。
ＣＧモード・シーン回想・サウンドモード、読み返しや既読スキップといった機能は装備しており、操作性の不満は特にありません。


音楽
全体的にコミカルで明るい曲が多いですが、
ブラスバンドやタンゴ、マンボやテクノなど音楽のジャンルが多彩な点が特徴。

この中では、勇壮なブラスバンド調だけどどこかコミカルな自衛隊のテーマ「俺達ゃ戦車がユニフォーム！」、
サウンドは「だんご三兄弟」で題名は「スキャットマン」のパロディというタンゴ風の宇宙人テーマ「Tango Del "Spaceman"」、
たれぱんだを彷彿とさせる気の抜けた「熱帯幻想もうアカン」でしょうか。


システム
途中でコマンド総当たりではない選択肢が表示される事もあるものの、
基本的には時折現れる「見る」「話す」「考える」といった、
コマンド群の中から行動を選んでいく極々一般的なコマンド選択式ＡＤＶです。
選択したコマンドは、コマンド一覧から順次消えていきます。

場所を移動する類のコマンドはありませんし、特に詰まるような箇所はないでしょう。


「クリッカブルを採用したＨシーン」
このゲームの特徴として、Hシーンでのみクリッカブル方式になる点が上げられます。

ゲーム中の呼び方はクリックカブルなど、言い方は様々なあると思いますが、
画面上の中でクリックできる部分にマウスカーソルが重なると、
マウスカーソルの形が変わるタイプですね。

この場合は女の子のイラストの体各位をエロオヤジのようにマウスでクリックして、
ｷﾞｼｷﾞｼｱﾝｱﾝするアレだと思っていただければ、わかりやすいのではないでしょうか。
2003年当時にＨシーンにこの仕様を持ち込むのは、なかなかユニークです。

しかしクリッカブルの持つ特有の問題、
つまり見落としが発生しやすく詰まりやすいという諸問題もそっくりそのままなので、
Hシーンだけ急にテンポが悪くなるという弊害を生んでしまいました。
（評判が悪かったのか、Vol.4のみオーソドックスなノベルタイプにも切り替えが可能）

とはいえクリックカブルを採用したおかげで、Ｈシーン中に関係ない所をクリックすると、
その度に主人公がボケツッコミを入れて笑わせてくれて面白かったです。

実は、製作者が一部かぶっている『パラレルハーモニー』でも似た傾向がありましたが、
『地球』ではよりはっきりとギャグに走ってくれているあたり、
エロシーンでのコメディをしたいから、敢えてクリッカブルにしたのかもしれませんね。


設定・シナリオ
主人公“柴崎慎太郎”は、平凡な大学生。
ただ、彼の父親はいつ来るか分からない宇宙人に備える地球防衛軍の博士。
怪しい兵器などを開発しているマッドな変人。

そんな父親から届いた一通の葉書が慎太郎の運命を激変させる。
“再婚してお前に妹が二人できたので、夏休みの間、世話を任せる”的な唐突な内容。
指示されるままに駅に新・妹達を迎えにいった彼は、
「ぱぱ」と呼んでくる二人の可愛い少女達に会う。
彼女達との生活が始まろうとした時、突如として現れた“宇宙人”と名乗る者達！
慎太郎は否応無しに地球防衛軍と宇宙からの来訪者の、
熾烈を極めた戦い（？）に巻き込まれるのだった！！


主人公の父親が地球防衛軍の創設者にして、科学顧問というマッドな変人。
義妹２人が実は同星人によって星を追われ、秘密裏に地球へ亡命してきた王族のお姫様だったりと、
主人公周辺の設定が「ARIEL」と椎名高志さんの「一番湯のカナタ」を足し合わせたような形ですね。


基本的にはドタバタコメディなのですが、
『地っ球の平和をま〜もるためっ！！』の真骨頂は、ズバリ仕込まれたネタの豊富さあります。

ざっと挙げてみると、軍事、経済、科学、歴史、特撮、テレビドラマ、テレビ番組、映画、政治・政局、時事ネタetc。
更にその他諸々の知識や雑学もあり、ジャンルの広さと量の多さには目を見張るものがあります。
第７話でパンダ見物のために上野動物園へ出掛けた時の会話を例として挙げると――


	

		
【麻理】
「あの向こうにぱんださんが……」
ごくり、と麻理ちゃんが喉を鳴らした。
【御台場】
「気合が入っているな」
【慎太郎】
「う、うん💧」
【江理】
「ぱんだは確率論的にしか存在しないので、
　蓋を開けて観測するまでは実存を確認できない」
【慎太郎】
「江理ちゃん、
　それはシュレディンガーの猫か何かじゃないかな〜💧」
【御台場】
「箱の中に入れるのであれば、珍獣でも問題有るまい」

    


	

		
【慎太郎】
「あ、そう言えばパンダ以外には
　お目当ての動物っているの？」
【麻理】
「ん？　ぱんださん以外……ん〜、象さんかな？」
【慎太郎】
「定番だね。江理ちゃんは？」
【江理】
「マグロ」
【慎太郎】
「それ、動物園にいないよ💧
　ついでにマグロは泳ぎ続けないと
　死んじゃうから飼育が難しんだよっ！」
【江理】
「じゃ、フ●イン」
【慎太郎】
「人ですかいっっ！！　つか某中東の大統領！！」
【御台場】
「前回の信任投票で支持率十割という
　著しく信憑性に欠ける数字を叩き出した人物だな」
【麻理】
「ベレーの似合うナイスガイだよね〜♪」
【江理】
「アレはいっぺん見たい……」
【慎太郎】
「あああ💧
　え〜、魚でも外国の大統領でも無くてですね、
　出来れば上野動物園に居そうな動物を
　挙げて欲しいんですが💧」
【江理】
「……シロクマ」
【麻理】
「シロクマさんなら、バンダさんに近いねえ」
【江理】
「……を絞殺した上野動物園職員」
【慎太郎】
「何故そうなるのっ💧　つか、上野動物園には
　そんな空手の神様みたいな職員が居るんかいっっ！！」
【江理】
「映画『小象物語』によると、
　戦中に食糧難から動物を殺せと
　命令が下りた際に実行したらしい。十五分で」
【御台場】
「動物を殺さえばならないまでの
　困窮状態に陥った先人達の苦労が偲ばれる」
【慎太郎】
「い、いや、感心すべきはソコじゃないと思うぞ💧
　ついでに思うのですが、
　戦中に実行したんならさすがに今、
　その職員は在園してないんじゃないかな〜？」
【江理】
「……残念」

    


	

		
【麻理】
「うにゃ〜！！
　ぱんださんに危害を加えると
　ワシントン条約違反になるんだよ〜っ！！」
【御台場】
「ワシントン条約と云うと、
　各国の保有間対数と基準排水量の制限を
　決めた物だったな」
【江理】
「……パンダは巡洋艦級？」
【慎太郎】

「ソレは第一次大戦後のワシントン軍縮条約！
　麻理ちゃんが言ってるのは
　１９７２年の希少動物の保護を定めた方だ！」

    


これだけでも相当量のネタが仕込まれています。
また、この上野動物公園以外の場面でも、様々に話題を振っています。


    

        
【博士】

「山○証券でも雪○でも日○ハムでも

　責任の取り方に関してはサンプルは幾らでもありますよ。

　全部失敗例ですがね」

    

（2009年の段階だと、もっとサンプルが増えそうですね）


    

        
【博士】

「記憶にございません」

    

（丸紅、あるいはダグラス・グラマン）


    

        
一番危険度の高い我が街のバルカン半島である茜ちゃんと史歩さんが怖い。

    

（ついにモンテネグロも独立……）


    

        
【長官】

「くそう、社○党が健在であればこんな事態は起こらないだろうにっ！

　辻○が憎いっ！　あの秘書が憎いッッ！

　時代を先取りワークシェアリングなんて

　アホ理論吹き込んだ奴ァ出てこいッッ(怒)」

    

（確かに時代を先取りワークシェアリング。
　労働問題の深刻さだけは笑えない程、酷くなりましたが……
　ついでに選挙に強い辻○先生は復活）


    

        
【慎太郎】

「しかし、我が大学ながら

　複雑な構造だよな、ホント」

【御台場

「学内を散策するだけで探検隊気分が味わえる

　お得な構造と言えるかもしれん」

【博士】

「もしくはダンジョン型のＲＰＧだな。

　昔懐かしウィ●ザードリーとか」

【麻理】

「“むらさまぶれーど”が強いんだよね〜♪」

【慎太郎】

「懐かしいな〜。手裏剣が全然出なくて

　忍者がイマイチ意味無かったりで」

【博士】

「だから儂がター●ファイルで

　増やしてやろうと云っただろうが」

【慎太郎】

「俺は自力で入手したアイテムしか

　装備しない主義だ！」

【江理】

「データは同じ……」

【麻理】

「気持ちの問題なんだよ、きっと」

【博士】

「子供じゃのう」

【慎太郎】

「うるせぇ」

    

（古くて新しい問題）


各話のタイトルでも、
「第四話『史上最大の作戦！　敵ハ東京湾ニアリ！』前編」という名称がついていたりと、
これでもか言わんばかりのネタのオンパレードで、製作者渾身の作品と言えるのではないでしょうか。


独創性
ゲームシステム的には特にありませんが、
次から次へと怒涛の如く繰り出されるネタのジャンルの広さと量の多さには目をみはるものがあります。
惜しむらくは、ネタのジャンルが幅広過ぎてブラックなジョークの存在が埋没しがちな点でしょうか。

それにしても、本作が発売したのは2003年ですが、
感想アップ時の2009年現在から改めて見直すと、
上の会話で出てきた「上野動物園のパンダ」「フ●イン」の鬼籍に入られた方々のほか、
別の場面で名前が出てくる「防衛庁」「北の国からの不審船」といった言葉に
時代を感じずにはいられません。


全般
全編に渡って高いテンションに貫かれたゲームで、
込められたネタの多さとジャンルの広さには、ただただ脱帽するばかりです。
その意味で、製作者渾身の出来であろうことは間違いと思うのですが……

このゲームって、Vol.1からVol.4まであるんですよね。４作で起承転結となる1つのお話でこれはチョット短い。
オムニバス構成のＡＤＶというわけでもありませんし、なによりVol.1からVol.4でゲームシステムに変化や改善があったわけでもありません。
（Vol.4でのみ、Ｈシーンがクリッカブルとノベル型で選択できるようになったが唯一の違い）

まあ、ストーリーの区切りを「第〜章」ではなく「第〜話」としていたり、
各話の間に「次回予告」と称する幕間劇が挿入されるので、パロディの意味も込めてアニメやドラマを意識したのでしょう。

ただ、本作はステージクリア型のアクション、シューティングやＳＬＧ等ではありませんので、
アニメやドラマのようなことをわざわざする必要があったのかは、実用性的な意味で疑問が残ります。

そういう事もあって、点数については７にするか８にするかでかなり悩みました。
ですが、ほかに本作について評価する機会もなさそうなので結局全部併せて８にしました。
それぞれ単品では７〜６点評価といったところでしょうか。

こういうパロディやカリカチュア満載で
時代を感じられるテンションが高いゲーム、また出ないｶﾅー。


得点８点


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