艶やかに 乱れまぐわう、浮世絵ＡＶＧ！
48 〜図形の恋〜

13cm

操作性
マニュアルには「コマンド選択式のＡＶＧ」と書かれていますが、
実際の所はＡＤＶに軽くＳＬＧ的な要素を加えた感じのゲーム。

基本的には江戸時代風の町を舞台にしているものの、町の背景絵にアドバルーンや飛行船が浮いていたり、
部屋に飾ってある額縁に「美少年」、掛け軸には「変」の文字が書かれているなど、色々とファンキーな世界観です。

なお本作の正式なタイトルは「48 〜図形の恋〜」ですが、タイトル画面やマニュアルでも「48」の読み方の表記は無し。
ネット上で調べてもオフィシャルでは読み方不明。
おまけに通販サイトや個人レビューサイト問わず、「しじゅうはち」だったり「よんじゅうはち」だったりバラバラなので、
目次ページのタイトルリストには副題の『図形の恋』だけで登録しました。


画面はフルスクリーン固定。『図形の恋』はゲーム中の画面割りに特徴がありますね。
画面をフランスの三色旗のように垂直に三分割して、そのうち左側と中央部分が背景絵＋立ち絵が表示される領域。
残った右側の領域には、ゲーム内の日付けや現在のやる気の値、完成した絡み絵の枚数が表示されます。

操作はマウスが基本。
テキスト関連については読み返し機能はなく、メッセージスキップはCtrlキーの手動スキップのみです。

ＣＧモード、サウンドモードといった機能は備えていますが、
ＣＧモードはサムネイル方式ではなく、順送り方式という時代を感じさせる仕様になっています。
またＣＧモード内に体位辞典という項目があり、体位のグラフィックと共に体位についての解説が表示されます。


「操作性雑感」
ゲーム中の操作で気になった事と言えば、「タイトルに戻る」のコマンドがない点でしょうか。

あと新しい体位を選んだ時に体位辞典で体位の解説を読みたくなっても、
ゲームを一旦終了させて、再起動しないと体位辞典を見れないのが不便でしたね。


音楽
『図形の恋』というタイトル名を反映してか、「三角柱の溜息」「笑顔のフラクタル」「妖しい放物線」など、
曲名に図形の名前がつけられている点に特徴があります。

ただ楽曲そのものについては、江戸時代風の世界観なのに和風の曲が少ないのが残念ですが、
この中ではとぼけた雰囲気の「呑気な二等辺三角形」、
パッヘルベルのカノン(ウィキペディアの解説)風のエピローグ曲「楕円の愛」でしょうか。


システム
ゲームの期間は２５日間。期間内に「男女の絡み図４８手」を完成させるのが目的です。
２５日目までに絵が完成していない場合は選択肢次第で５日間の猶予が与えられ、
ゲームの期間が最大３０日目まで延長されます。

主人公は「やる気」というパラメーターがあり、一日に描く事のできる絡み絵の枚数となっています。
ただし、メインのモデルのほたる以外はやる気の値に関係なく１枚しか書けません。

やる気の値は日付け毎にあらかじめ決まっていて、
ゲームをプレイする都度その日のやる気の値が変化するという事はありません。


「ゲームバランス」
「男女の絡み図４８手」の絵を完成させる事自体は特別難しいわけではないのですが、
全４８枚のうち何枚かは出現条件を満たしていないと登場しないキャラが絵のモデルになっているため、
フラグロストが発生していると「４８手図」を完成させる事が絶対にできなくなります。

とは言え、２５日目までに絵が完成した場合のエンディングパターンよりも
３０日目までに絵が完成した場合や最終的に絵が完成しない場合の方に
数多くのＥＤパターンが用意されているので、それほど神経質にならなくても大丈夫でしょう。


設定・シナリオ
自らの筆から生まれた女だけを愛する男がいた。
浮世絵師、如月青真（きさらぎ せいしん）。
才能はあるが、その性格で、モデルの受けは極めて悪い。
干される寸前の彼に舞込んだ大仕事。
それは、艶画の極み『男女の絡み図４８手』を完成させる事だった。
……期限は２５日間


絵師の主人公が期限内までに依頼された艶画を全て完成させるお話。
ファンキーな世界観という事もあって、全体的にコミカルでテンポの良くストーリーが進んでいきます。

主人公は自らの筆から生まれた女だけを愛する男という相当な偏屈者の設定ですが、
ゲーム中はせいぜいちょっと気難しい程度。人格破綻者として表現されているわけではありません。
なので、主人公のヤバさにプレイヤーが引いてしまうなんて事は特にないかと。

むしろゲーム開始時の段階で既に遊郭の常連なので、
「自らの筆から生まれた女だけを愛する男」という看板に偽り有りかもしれません（笑


「版元頭で始まり、版元頭で終わる」
『図形の恋』でツボだったのが、主人公に仕事を回してくれる書店の版元頭。
おおよそのデザインは、歌舞伎の「連獅子」の親獅子の精・子獅子の精、
あるいはカブキロックスのボーカル・氏神一番、サムライスピリッツシリーズの千両狂死郎といった感じ。

しかし顔こそ白く塗っているものの、派手な隈取はなく目の周りを赤く縁取っている程度ですが、
頭の左右で紅白に色分けされた大ボリュームの長髪、
「〆切厳守」(実際の表記は「守厳切〆」で、右から左に読む)の文字が踊る額当て、
巨大なドクロと大波がデザインされた裃という、氏神一番や千両狂死郎を更にパワーアップさせたような物凄い井出達。

また立ち絵のデカさも特徴の１つです。
背の高さは画面上まで届き、横幅は他のキャラクターの３倍近く。
このため版元頭の立ち絵は背景絵全体にかかるほど。
版元頭が画面上に現れるたびに、立ち絵のサイズに圧倒されます。

これだけでも既に十分インパクト大なのに、オネエ言葉で喋るw
果てはゲームディスクのレーベル面を飾っているのは、ヒロイン達を差し置いてこの版元頭だったりします。

このように見た目のインパクトという点では、
同じくファンキーな江戸時代風の世界である『くるみちゃん にんじゃあ』の「虚無僧Ｘ」を遥かに凌駕しています。

ですが版元頭の出番はオープニングで「４８手図」を依頼する時、締め切り日と絡み絵が完成した時ぐらいしかありません。
ゲーム中で何かとちょこちょこ出てきた「虚無僧Ｘ」とはトントンぐらいの感じですね。

まあこれほど濃いキャラクターが、頻繁に出てこられても鬱陶しいだけなので、
原則として最初と最後しか出さなかったのは正解でしょう。


独創性
ファンキーながら江戸時代風の世界観なので、基本的に登場キャラクターは和服です。
和風世界観が非常に珍しいというわけではありませんが、少数勢力なのは確かですし、独創性は高いのではないかと。

もっとも、中にはカブキロックスがいたり、
ヒャクメ様のような「なのね〜」喋りをするサリーのインド人も混ざってます。

あと、これは『トキノ戦華』での繰り返しになりますが、
『図形の恋』も他の和服エロゲーと同じように、
柄付きの着物を着ているキャラクターは稀。大概は無地の衣装です。

一応、パッケージイラストを飾るメインヒロインの半裸姿では
柄付きの着物になっていますが、ゲーム中だとせいぜい版元頭ぐらいなものです。


「体位４８手」
あとは体位４８手を網羅している点でしょうか。

体位４８手を全て網羅するというのは、それだけでＨシーンを４８も用意できるので、
一見するとエロゲ向きな題材のように見えますが、実は珍しい存在だったりします。
自分が知る限りでは『図形の恋』を含めても４タイトルしかないなど少数派。

原因は４８手という特殊性ゆえに、
グラフィックやストーリー構成に負担がかかるためはないかと考えています。

グラフィックは調教ＳＬＧや調教ＡＤＶのように、
大量の差分を用意する事で同じグラフィックを
何度も使い回す事ができない点が挙げられます。

４８手の場合、体位のバリエーションが非常に豊富で
普段は滅多にお目にかかれない特殊な体位が多く、
中には「押し車（おしぐるま）」や「吊り橋（つりはし）」のような
筋トレまがいのアクロバットな体位もあるため、
体位毎に違った絵を用意しなければなりません。

ストーリーの観点について言えば、体位４８手をコンプリートする事自体が酔狂なので
『図形の恋』のように４８手を集める事自体が目的という強烈な動機でもない限り、
わざわざ４８手全てを網羅させる必要がないんですよね。
初々しい学生のＨで４８手を網羅とか、復讐に燃える男の４８手なんて最早それだけでギャグじゃないですか。
（「押し車」とか「吊り橋」なんかは特にw）


    

        
押し車（おしぐるま）
これは女の子の方からすれば、何とも疲れる体位だろう。
後ろから挿入を行ったまま、男は女の脚を脇に抱える。
女は両の手で自分を支えなくてはならない。この状態で部屋中を動き回る。
体が鍛えられそうな体位ではある。

    
    

        
『48 〜図形の恋〜』の体位辞典より

    


    

        
吊り橋（つりはし）
これは「曲とり（変化の強い体位）」に含まれる体位だ。
正常位の変化といえなくもないが、お互いの負担は大きく違う。
女は仰向けのまま、両の手で体重を支えなければならない。
男も女が支えきれない分を支える。
これだけハードだと、さすがに、長時間のプレイは、恐らく不可能。
皆さんも、くれぐれも無理はせぬよう。

    
    

        
『48 〜図形の恋〜』の体位辞典より

    


むしろ話の流れの中で４８手を全てプレイさせるぐらいだったら、
『図形の恋』のように集める事をストーリーの核に据えた方が遥かにラク。
種々の事情により、体位４８手を扱うのには向いていないのでしょう。

ちなみに、ＡＶでも体位４８手を取り扱ったものを見ないのは多分時間と手間の問題。
１２０分の長さに４８手を全て詰め込もうとすると、
１手につき２分半の時間しか割り当てられません！


「使用上の注意」
最後に、版元頭を筆頭とするファンキーな世界観以外で面白かったのが、
マニュアル記載の「使用上の注意」。以下、面白かった部分だけを抜粋。


    

        
「使用上のご注意」
長時間ゲームをする時は、健康のため１時間ないし２時間ごとに、

１０分〜１５分の小休止をして下さい。

また寝不足になる程に睡眠時間を削ってはいけません。

健康は明日への活力です。

ＣＤ−ＲＯＭはゲームのためにのみ、ご使用ください。

食べ物ではありませんので、噛んだり舐めたり曲げたり、

またセンター孔を大きくしたりもしないでください。

このプログラムは著作権法によって保護されております。

データの改造、改変や不法なコピーはおやめください。

その作業によって媒介機器や装置が故障しても、責任は負えません。

また改造によってモザイクは取れません。時間のムダになります。
    


もうノリノリw
モザイク外しって、DOS時代のエロゲーじゃあるまいし……


全般
点数は７。
版元頭だけで妙に満足してしまった覚えがあるゲームですね。
なんというか、ヒロインたちや主人公よりも印象深いというか。

ほかにも、体位辞典はサラリと目を通すだけでも面白いですし、
版元頭を筆頭としたファンキーな世界観は好きなんですが、
日数経過によってゲームが進行するゲームシステムなのですから、
複数のパラメーターを用意するなりして、
もっとＳＬＧ的な要素を加味して欲しかったなーと個人的には思います。

点数について悩む事は多かったのですが、似たような世界観を持っていて、
「虚無僧Ｘ」がいる『くるみちゃん にんじゃあ』を７点にしたので、
『図形の恋』についても７点だとバランスがいいかなとも思いました。
まあ、いつもの事ですが、
時間が経って気が変わったりすれば、点数を変える事があるかも。

版元頭を礼賛しただけで終わった感想文のような気もしますが、気にしてはいけません。


得点７点


関連感想文
くるみちゃん にんじゃあ(PC-98)
トキノ戦華(Win)

戻る